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| 父と私 |
私は物心ついた時から、朝早く起き深夜まで働き続ける両親の背中を見て育ちました。
子供心に「こんな大変なだけの商売は継ぐものか!」と思うほど両親の仕事はきついものでした。
日本全体が、懸命に汗水流して働く人たちに支えられ豊に発展した時代であったと思います。
羊羹(ようかん)屋の家業は6歳上の兄が継ぐことになりました。
兄は東京で製菓専門学校を経、老舗で修行をし、地元に戻ってからも他の企業で製菓業一筋に経験を積みました。
平成12年に両親が高齢になったこともあり、期待を一身に家業を継ぐことになりました。
その時、兄が『富貴堂』と社名を一新し、父が頑固に守った玉羊羹(玉ようかん)の歴史に新しい風を吹き込み、
順風満帆な新たなスタートに社員一同喜びました。
しかしその年、思いもかけず兄は突然の病に倒れてしまいました。
兄は誰にでも優しく真面目な人柄で、お客様が大好きで、お菓子作りが大好きで、取引先の皆様を家族以上に大切に考える人でした。
『本当にお客様に喜んでもらえる、美味しい菓子を作りたい。』最後の最後までその情熱を切らすことなく魂を込めて富貴堂に命を吹き込み、
兄は 帰らぬ人となりました。
私達は悲嘆にくれましたが、両親は兄が引継いだ商売を絶やすまいと、涙をみせず懸命に菓子作りに邁進しました。
そこで私は一大決心をしました。
菓子作りには全く素人の私ですが、両親と兄の後ろ姿を見て『富貴堂』を絶やしてはいけないとの想いが強くなり、継承することを兄に誓いました。
何もわからない私でしたが、おかげ様で多くの皆様に支えられ、ここまでくることができました。
本当に温かいお客様や取引先の皆様のご支援で、両親から兄が継いだ『富貴堂』を絶やすことなく今に至ることができましたことを、心より深く感謝しております。
両親の真摯なものづくりへの想いを受け止めた今は、子供の頃家業に誇りをもてなかった自分を恥ずかしく思い、お菓子作りに努力精進する毎日です。
そして
兄が願ったように、お客様に本当に喜んで頂ける美味しいお菓子を探求してまいります。
『富貴堂』にとって、家族の絆こそがお菓子作りの原点です。
このところ、食の安全や信頼を揺るがすようなニュースが新聞やテレビで報じられています。
食に関わるものとして、とても残念に思います。
すくなくとも私達は、利益よりも前に安心安全を最優先とし、誠実に真面目に美味しいお菓子を作り続けていきたいと、強く強く願っております。
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